この本の隣にあの本を置く

本と日々にまつわることをすきなように、すきなだけ

映画と過ごす2018年

2018年の小さな目標は、毎月一本映画を観ること。

日が過ぎれば増えていく(はず)の、映画館とAmazonで観た映画の記録です。

ねたばれへの配慮は基本的にあってないようなものです。

 

 ◇2018.1.31 -『キングスマン2 ゴールデンサークル』(映画館)

【米国版・日本語対応】キングスマン: ゴールデン・サークル (4K Ultra HD)※ページ下部の商品説明を必ずお読みください

スパイと記憶喪失は浪漫ですから☆☆☆☆ / 思い切りが良すぎませんか☆☆☆☆ / 何というカントリー・ロード☆☆☆☆

 これは前作に続いて語られた、一人の青年のサクセス・ストーリーなんだ。

……というのが、エンドロールを見つめながら思った感想だった。まったくもってそうなんだけど、まさかここまで行き着くとは思っていなかったこともあって、そうなんだー! とびっくりした。魅力的な人物や設定をここまで思い切りよく……よく……というのが前作にも増して強まっていて、思い切りが良すぎる切れ味の鋭さに、観ながら内心(もったいない!)という悲鳴を上げていた。同時に、やっぱりスパイは浪漫だし、ハリーの記憶喪失と幻覚描写がこれでもかというくらい心を刺激してくるのが(記憶のトリガーがあれなのが、ハリーという人物を物語っていて胸がきゅっとなった)ずるい。それはもうずるい。

少々ウィットの効き過ぎた切れ味のよさといい感じに狂っている敵、だめだけど愛すべきひとたち、僅かな間に交わされたことばのやりとりを経た祝福のラストシーン……と、最高でした。ちょっと刺激的だけどすきだよ!

エグジーへのお祝いの気持ちを込めてパンフレットを買った。

 

 ◇2018.2.7 -『高慢と偏見とゾンビ』(Amazonビデオでレンタル)

高慢と偏見とゾンビ(字幕版)

戦う女の子は好きですか?☆☆☆☆☆ / 原作への愛☆☆☆☆ / ゾンビ映画初心者に最適☆☆☆

もう何にも頑張りたくないし、三百年くらい引き籠もっていたい気持ちがした日に観た。悲しみがだいぶ鈍ってしまうくらい、はちゃめちゃに楽しかった。原作(この場合は『高慢と偏見』)と既存の映像化への愛とリスペクト、そしてパワーに満ちていた。

“出会いは、最悪だった”という、みんな大好き永遠のラブコメ高慢と偏見』にゾンビ要素がプラスされた小説の映像化。小説の方は未読。ダーシーは日本刀でゾンビだけでなく整えられた木々だって切りつけちゃうし、エリザベスはもちろんのこと、ベネット家の五人姉妹はみんな少林寺の使い手だし、夜会のドレスには武器を忍ばせる嗜み持ちだしで、最高でしかない。

ミスター・ダーシーが最初「まあまあ」と評していたエリザベスに対する認識を改めるの際、意思のある“黒い瞳”だけでなく、「武術の身についた腕の筋肉が女らしくてよい」と言うのが最高すぎた。あの天使のようなジェインだって戦う!(最高!)

ゾンビの対抗策として、裕福な人は日本で、そこまで裕福でない人は中国でわざわざ武術を学ぶという設定があり、それによって「あなたは日本じゃなかったの?」という揶揄が生じていて、ひゅー! となった。実はゾンビ映画を観たことがなかったのでどきどきしていたのだけど、かなりマイルドな描写だから、ゾンビ初心者にも安心。

いろいろ突っ込み入れたくもなるけどめちゃくちゃ楽しかったし、世界=英国だし、もう細かいことはすべて原作への愛がなぎ倒していった。日本刀で戦うダーシーと引けを取らないどころかヒーローも助けるエリザベス*1というだけで、もう最高でした。人様のお家で喧嘩する場面でどきどきしてたいへんだった。コリンズやリディアへの愛も感じた。あと、レディ・キャサリンすき。

 

◇2018.3 - なし

かなしいことに、三月は映画を観ることができませんでした。引っ越しの準備をしていました。

 

◇2018.4.25 -『名探偵コナン ゼロの執行人』(映画館)
劇場版 名探偵コナン 純黒の悪夢(ナイトメア)(通常盤)[DVD]
わりとすぐ二回目を観に行きましたよね☆☆☆☆ / なんという運転技術☆☆☆☆ / トリプルフェイスずるい☆☆☆☆

コナンの映画を映画館で観るのは三作目で、たぶん観ていない作品の方が多かったりする。つまりは一昨年から観ている(そして一昨年、原作を大人買いした)。

ゼロの執行人は、江戸川コナン(工藤新一)が幾度となくくり返してきた「真実は、いつも一つ」に対する、丁寧で誠実なアンサーだというのが、観終えて一番最初に思ったことだった。主題歌が、正解でしかない。真実は一つかもしれないけど、その周りには必ず人がいて、人の分だけ幸も不幸も降り積もっている。

降谷零のようなキャラクターが、いま、いまの日本にいるんだ! という驚きがすごかった。思わず(そんな価値なんてないかもしれないのに)と、内心呟いた。でも、そういううつくしいものばかりでない国をまるごと主語で覆ってしまうのが降谷零なんだろうなあという気もする。

安室さんは本当に、いついかなるときも顔がよかった。すこぶる顔のよい男だった。

所有格すごいな…という感想が一番強い。ずるい。

 

◇2018.5.25 -『君の名前で僕を呼んで』(映画館)

Call Me By Your Name / [Blu-ray] [Import]

静かに胸を穿たれた☆☆☆☆ / レトロでお洒落で、切ない画面☆☆☆ / 眩しい☆☆☆☆/ 桃☆☆☆

やわらかくてころんと丸みのある音楽と、そこにあってそこにないかのような色と、ひと夏の眩しさが静かに胸に穴を空けていった。そういう映画だった。

Twitterのタイムラインでタイトルを見かけることが多くて、どうやらすごくいいらしいということだったので、ふらっと観に行った。うっすらと疲れの続く中、予告編すら観ないままだった。地元で一番居心地のよい椅子の映画館で、現実がしんどいなあと思いながら、今後上映される作品の予告編をぼんやりと観おえると、懐かしくてうつくしい色彩が物語を紡ぎはじめた。

少女小説の研究をしていたときに、繰り返し目に触れ、また投げかけられる「通過儀礼」「大人になる前の一時のこと」といったことばが、ひどく厭だった。大切に受け止められていたものがそう片付けられてしまうのが、どうしようもなく厭だった。

そんなことを頭の片隅に思い出しながら、やさしく、そして一瞬を噛みしめているかのように聞こえてしまう音で名前が呼ばれるのを見つめていた。

 

◇2018.6 - なし

暑くなってきたせいか、何も観ることができなかった。かなしい。

本当はバーブバリの爆音上映に行く予定だったのだけど、流れてしまった。

 

◇2018.7.16 -『バーフバリ2 王の凱旋』Amazonビデオでレンタル)

バーフバリ2 王の凱旋(吹替版)

なんだかすごかった☆☆☆☆ / 前情報ほぼゼロの衝撃☆☆☆ / 一騎当千☆☆☆☆

人と予定を摺り合わせるうちに上映を逃してしまってしょんぼりしていたところ、Amazonで期間限定セールをしていたのでぽちっとしてみた。

・2→1の順で観るのもあり

・何だか観た人がみんな「バーフバリ! バーフバリ!」と言う

・「バーフバリ観たいな」と呟くとどこからともなくいいね♡される

ということぐらいしかろくに知らなかったので、おそるおそる観た。

なんだかすごかった。それはもう、なんだかとてもすごかった。それに尽きる。

のっけからもうどーん! どーん! ばこーん! と、小気味よすぎる展開がわんさか続く。もうびっくりした。びっくりするうちに船まで飛びだしてしまい、びっくりした。もうこの時点ですでにバーフバリが無双しまくった後だったので、(その船そんなに人乗るの?)とか、そんなことはどうでもよくなっている。ふたりの愛が船を飛ばせたのだ。

それにしても不安になるくらバーフバリは素晴らしい男で、デーヴァセーナは素晴らしく矜持が高いいい女で(あの弓のシーン、最高過ぎましたね)、不安になるくらい意志がつよかった。わりと好き勝手に生きている私が言えたことではないのだけど、このふたり、この世界で生きるには存在がつよすぎるのでは……と、途中からずっとはらはらしていた。それはもうはらはらした。やっぱり、はらはらする展開になった。面白い。

シヴァガミさまはよくも悪くも人間らしい為政者かつ「母」で、バーフバリは世間のあれこれを軽く飛び越えていく天性の王者で、従兄弟のバラーラデーヴァはやっぱり人間らしい悪さと権力を持ってしまった王様で……と、途中までは(バーフバリ最高に格好良いけど、あんな従兄弟がいたら、そりゃあやりづらかろう……)とバラーラデーヴァを気の毒に思っていた。私だったらぜったいバーフバリと比べられるなんて無理。だけど、黄金像とあの戦車がでてきたあたりで、「バ、バラーラデーヴァ……!!!」と色んな意味で叫んだ。すごいよ。意外と肉体派だった。

ものすごく疲れていたときの、真夜中に観たせいで、しばらく言語化することができなかった。バーフバリ、その名はすべてを吹き飛ばしていく映画……!(とっても面白かったので1も観たいです)

 

*1:このエリザベスは蝿を手で捕まえてぎゅっとしてヒーローの手にぱらぱら落としてしまえるという時点でもう最高です、何回最高と言えばいいのかわからない