会社を辞める、そして本を贈る。
ずっと行ってみたいなと思っていたちょっといいお店でのことだったり、いそがしい間を縫って個別にお食事の場を設けて貰ったり……。
関係性によって御礼の仕方はさまざまになったけれど、ぐるぐる考えた結果、同じ部署で働いていた人たちには、ちょっとしたお菓子と一緒に本を贈ることにした。
フェアな上司に贈る本
私の直属の上司は、会社で一番フェアなひとだったと思う。私が産休に入った彼女から引き継いだ仕事は、いつも「彼女ならどう判断するか」という軸を意識しながら、自分なりの色を塗り、形をやんわりと整えていったものだった。いつしかそれらをほとんど迷いなくこなせるようになって、個人的にしてもらった送別会で「私たちの仕事って、こうですよね」と話すことができた時間は、とても楽しかった。そう話せるくらいに成長できたんだな、ということを噛みしめたひとときだった。
そんなフェアな上司にと選んだのは、先日めでたく完結した名作漫画『A子さんの恋人』(KADOKAWA)で知った近藤聡乃さんのエッセイ漫画『ニューヨークで考え中』(亜紀書房)。
この漫画はコデックス製本でぱたんと180度開くから、小さなお子さんの様子を見ながらでも読みやすそう、というのが決め手だった。見開きで1エピソードだから、ちょっと途中で読みさすのもしやすいかな、と。あとは上司がアート系の学部を出た人で、パートナーさんの本棚にエッセイが多いと聞いたことがあったから、これだなと思ったのだった。
普段読むものと読まないものの狭間を探った本
本を贈ることにしたのはいいものの、一番危惧していたのは、(日頃から本を読む先輩に贈った本が、もし既読だったらどうしよう)ということだった。……余談だけども、予備に用意していた本も未読のようだったので、私の目利きはただしかった! と一人悦に入っていた。やったね!
インスピレーションで決めた本
小さなお子さんがいて、それ以前からも絵本が好きだと言っていた先輩に贈るのは……と、私が好きな大人向けの絵本をいくつか手に取ったけれども、なかなか決められなかった。絵本の沼というのは、インク沼と同じくらい深いのではないか……という思い込みがあって。この本は、小学生の時に出会ってから大好きで、今も大事に単行本を持っている本の一つ。ちなみに、私が一番最初にファンレターを書いた作家さんでもある。児島なおみさんのふんわりした細い線が印象的な装画を見て、すぐに先輩の顔が思い浮かんだ。それで、これに決めたのだった。
娘を持つ上司に贈った本
本を贈った四人の中でも、一番関わった年数の少ない上司は、本を贈っても「いやあ、読まないな~」と言いそうだし、たぶん読まないんだろうな……という想像が浮かんで、ぐるぐる悩んだ(実際、そう言われた)。ちなみにこの本は、お会計のときに店員さんに「あの、僕も娘がいまして……お話を聞いていて、あ、聞き耳立ててたみたいですみません。でもあの本が気になったので、タイトルを教えてください」と声をかけられたりもした。嬉しかったな。ちゃんとメモを取ってくださったので、読んでくれそうだった。
ものすごく暗い場所にあって、かつ人数がいないと苦しいお店なのでなかなか行けないけど、再訪したときには感想を聞いてみたいなと思っている。
……などと、ずいぶん前のことのように感じられるこの四冊の本のことを思いだしたのは、本を贈った人が、一人を残して会社からいなくなったと風の噂に聞いたからだった。
会社が爆発四散してしまったの!?(してない)と想像してしまったくらい、衝撃だった。そんなこと、あるんだ。まあ、あるよね……としばらく混乱してしまったくらいには、辞めるときに(また訪ねればみんないるんだろうな)と思っていたような人たちだったのだ。
もうぜんぜん一つ所にはいなくて、たぶん二度と会わない人もいるんだろうなあと思うけれど。分かたれたそれぞれの道々で、あの時贈った本たちが……たとえまだ日々の合間に埋もれていたとしても、いつか本棚や部屋の隅から見つけてもらって、その人にとって一番いいタイミングで読んでもらえたらいいなと思う。
結婚祝いに、レシピラックに本を詰めて贈ったよという話
仕事で知り合って、プライベートでもときどきご飯に行く人がいる。なんとなーくですますとため口が8:2くらいで話しているけれど、ちょっと踏み出して友達って言ってもいいんだろうな、そう言ったらきっと喜んでくれるんだろうな、という仲の。
少し前に彼女から連絡をもらったとき、(たぶん、近々ご結婚されるんだな)と気づいた。そういう報告を、きちんとするひとなのだ。だから約束した日にお花を買っていこうか随分悩んだのだけど、その日は暑かったから、結局花屋の前は素通りしてしまった。
もぐもぐ食事を楽しみながら予想通り嬉しいおしらせを聞いて、お祝いに何を贈ろう? とそわそわ考えはじめた。やんわり尋ねてみたけれど、家電の類いは遠慮されてしまったし、お皿もマグカップも宛てがありそうだった。
次はカフェでランチしましょ、と約束した日が近づくまでの間、結婚祝いの品を悩みつつ出掛けた本屋で、すとんと思った。
やっぱり、私に一番できるのは本を選ぶことだ。
はじめは、レシピ本の詰め合わせがいいかもしれないと思った。結婚後は少し遠いところへ行く彼女が、料理に力を入れたいと話していたから。
でも、いざ探しはじめると、作り置きとか時短とか……もしくは修道院のレシピとか、ついそういう本ばかり手に取ってしまう。好きなんだけど、今回はちょっと違う。だからレシピ本は一冊に絞って、そのかわり新生活に使えそうで、たぶん他の贈り物とかぶりにくいだろうレシピラックに本を詰めることにした。
- まずはレシピ本を一冊
- お次はレシピ本の隣に並べたい一冊を
- その次は、ぱっと開いたところから読んでも楽しい本
- ならその後には、眺めても想像しても味わえる本を
- 一冊だけ漫画を混ぜるならこの本がいい
- 最後に、私の名刺代わりの本を一冊
- 後はレシピラックに詰めてサンドイッチを添えるだけ
まずはレシピ本を一冊
土井先生の本をご家族にプレゼントされたというお話を聞いていたので、レシピ本ならお菓子かパンにしようかな……と考えるうちに、「ジャムとか作ってみたいですね」という話をしたことや以前お土産にすてきなクロワッサンをくださったことを思い出した。そこで選んだのが、福田里香『季節の果物でジャムを炊く』(立東舎)。『まんがキッチン』で知って以来、ひっそり好きな菓子研究家の方で、『いちじく好きのためのレシピ』(文化出版局)にはばきゅんと胸を撃ち抜かれました。
お次はレシピ本の隣に並べたい一冊を
レシピ本は一冊だけ……と決めたものの、最初に思いついた「いろんなレシピ本をレシピラックにすきっと詰めて贈る」イメージを忘れられないでいた。『季節の果物でジャムを炊く』を選んでからも、しばらく596を割り当てられる本が並ぶ棚の周りをぐるぐる回っていた。
レシピ本を選ぶのは、結構かなり難しいことだ。そして私は食べるほうがうんと得意なので、たくさん選ぶには力が及ばない……とようやくふんぎりをつけて、私なりのセレクトとして石井好子『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(河出文庫)を棚から抜いた。
書名がまずもう絶対的に素敵なこの料理エッセイは、はじめて読んだときも読み返すときも、私にとってはどこか不思議な手触りを感じる本でもある。バタをたっぷり入れたオムレツの、あの文章だからこそ感じるイメージがずっと好き。あの飾り気のないすきっとした文章に「バタ」とか「キャフェテリア」ということばが自然に綴られているのも、好きなところ。
その次は、ぱっと開いたところから読んでも楽しい本
はじめから、どこから読んでも楽しめる、目で見て楽しめる本を一冊入れようと決めていた。カメラが好きなひとだから、写真集もいいかなと色々見たけれど、しっくりくるものがなかなかなくて、Twitterで知って気になっていた本を見に向かった。
丁寧で繊細で、何より情感のあるタッチで描かれた石の絵とその温度にちょうどいい、でも浪漫のある解説文が見開き一頁に配された矢作ちはる・内田有美『石の辞典』(雷鳥社)がとても素敵だったので、すぐこれにしようと決めた。自分用にも一冊買うつもり。
併せて、うつくしい鉱石の写真と物語を味わえる長野まゆみ『鉱石倶楽部』(文春文庫)を添えたかったのだけど、こちらは最寄りの書店では在庫がなかったので、いつか紹介したいなと思っている。
ならその後には、眺めても想像しても味わえる本を
『鉱石倶楽部』が棚になくてしょんぼりしたので、『石の辞典』がぱっと開いたところだけを読んでも楽しい本ならば、もう少し物語性であったり想像がふくらむような本を一冊選ぼう、と考えた。
思いつくのは、やっぱりクラフト・エヴィング商會の本だった。王道に『クラウド・コレクター』?(でもあの本はハードカバー版を贈りたくなってしまう)、本好きとしては『おかしな本棚』?(でも、彼女の一冊目のクラフト・エヴィング商會はこれではない気がする)と悩んで、『アナ・トレントの鞄』(新潮社)を選んだ。ありそうでない、でもないようでどこかにはありそうな、クラフト・エヴィング商會のあのじっくりと味わいたい品々や世界観と出会ってほしいなと思って。写真が好きなひとだから、あの世界の空気ごと切り取ったような写真の良さもより感じ取ってくれるはず。
一冊だけ漫画を混ぜるならこの本がいい
一冊だけ漫画を混ぜるとしたら、どれがいいだろう。シリーズよりも、一冊完結がいい。
そう考えて選んだのは、川原泉『美貌の果実』(白泉社文庫)だった。眠れない夜に川原泉を読むと、そのさみしさに寄り添ってくれるような、程よい距離感のあたたかさにほっとする。世代的に、たぶん本好き・漫画好きでなかったら手に取る機会が少ないかもしれないな、というのも決め手だった。短編集だから、ひとつ摘まみ読むのにもいい。
『美貌の果実』と『フロイト1/2』は傑作しかない短編集で(いえ川原泉作品はいつだって傑作揃いですが……)特に『美貌の果実』は手にとる度に、読めてしあわせだなあとしみじみ思っている。
最後に、私の名刺代わりの本を一冊
ほかの本は彼女のことを思い浮かべながら選んだけど、佐々木丸美『崖の館』(創元推理文庫)だけは少し違う。
お祝いで贈り物だけれど、一冊だけ、私のわがままを入れよう。
一冊、また一冊と腕の中に本を増やしていくうちに、そう思いついたから。
この本が、お祝いに相応しいかはわからない。結末を思い浮かべると、ぴったりではなさそう……とも思う。それでも、中に描かれているものは彼女に伝わると思ったし、何より「一番好きな作家は?」と問われたら「佐々木丸美です」と答える私を、仲よしだけれど程よい距離のある、仕事で知り合った彼女に改めて紹介するのなら、この本がいいと思った。
後はレシピラックに詰めてサンドイッチを添えるだけ
ぽちったレシピラックが届いたのは、お祝いを渡す前日のことだった。これが想像していた以上に重たくて、果たして手渡してもいいもの……?? とずいぶん悩んだ。
でもでも、マグネットで冷蔵庫にくっつくし、白でデザインもシンプルだから邪魔にならないし、本が映えるし(重要)、縦横両方で使えるし、重いのは造りがしっかりしているということよね……。と、あれこれ入れ方を工夫しながら本を詰めてOPP袋に入れ、せめてもと一番軽そうなクラフトバッグに入れた。しかしやっぱり、めちゃくちゃ重かった。
よく忘れてしまいがちだけど、本ってそもそも、少し数が増えると重たいものだった。そうでした。そうでしたね!!(※本好きは本の重さを幸せに還元しがちなので、重さについてはなかなか脳が正当に処理してくれない。)
クラフトバッグには、「ほんとうに重いですよね……」というお詫びと、↑に書いたような本の紹介をさらっと書いた手紙を添えた。おいしいものを食べることが好きで仲良くなった彼女への手紙には、見つけたときに飛び上がってしまったほど可愛い、古川紙工のサンドイッチレターがいいなと思って。手前のパンをぱたんとひらくと中に手紙が書けるようになっている。たまごサンドとカツサンドを一枚ずつ使った。かわゆい。
そんなこんなで紙袋の重たさに震えながら迎えた約束の日、おいしくランチをいただいた後、「ものすごく重いんですけど……」と何度も言い訳をしながら、そっと重たい紙袋を渡した。
目の前で一冊一冊手に取って、「これは私より先に母が読みそうです」とか「全然知らない本ばかり!」と言う彼女を、隣の席に座っていた人たちが不思議そうに何度か見たくらい、心配していたのが嘘みたいに喜んでもらえた。私も、とても嬉しかった。彼女はとても素直で、何を贈ってもきっと喜んでくれるようなひとなのだけれど、だからこそ、私なりの一番いい贈り物をしたかったから。
本は値段が分かってしまう贈り物だし(かといって、本にシールを貼ることは信仰上出来ない)、全部ひっくるめても「いわゆるご結婚祝い」としては手頃過ぎるのかなあと悩んだりもしたけれど。びっくりするくらい喜んでくれた彼女の様子を見て、まだ程よい遠慮もある私と彼女の関係には、そのくらいのささやかで大仰すぎない贈り物がちょうどよかったんじゃないかな、と思えた。嬉しかったな。あと、たぶん車で来るだろうから……という予想が当たっていて、本当によかった。ほっとした。
後日お会いしたときにパートナーの方にもご挨拶したのだけど、初対面なのにすごく楽しくてずっと笑ってしまったし、ふたりで並んでいるのがとっても自然でお似合いだった。親しいひとの嬉しい報せは幸せな気持ちになるし、ただただ嬉しい。
新しい生活の中で、プレゼントした本が何でもない時間の隙間を埋めてくれたり、日々のささやかなうるおいになってくれたらいいな、と思っている。(まあ、また近いうちにご飯するんですけれどね!)
無垢でいてと願うのは、ひそやかな呪い - 『LILIUM ーリリウム 少女純潔歌劇ー』
少女と永遠の命は、相性がいい。
そのふたつを閉ざされた花園が包んでいるならなおさらのこと。
吸血種、花の名前をつけられた少女たち、サナトリウム、消えた友達……。
本棚に並んでいるいくつかの物語がそうだったように、ミュージカル『LILIUM』は、あらすじに散りばめられたことばを拾い集めるだけで、「ああ絶対好きだろうな」と思う作品だった。
演劇女子部 ミュージカル「LILIUM-リリウム 少女純潔歌劇-」 [DVD]
- 作者: モーニング娘。’14 メンバー×スマイレージ
- 出版社/メーカー: アップフロントワークス(ゼティマ)
- 発売日: 2014/09/24
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吸血種が迎える繭期(人間でいう思春期)の少女たちが療養するサナトリウムで、シルベチカという少女が失踪する。サナトリウムの少女たちは、リリー以外彼女のことを覚えておらず…。
別々の人から薦められてもいながら、しばらく手に取らないでいたこの作品を観たのは、お友達がぽーんとDVDを送ってきたからだった。いつか観たいんですよね、とTwitterで呟いたら、翌日には手元にあった。
添えられていた「沼に突き落とすときは丁寧にエスコートする」ということばにふさわしく、『TRUMP~REVERSEバージョン~』と『LILIUM ーリリウム 少女純潔歌劇ー』、『LILIUM ーリリウム 少女純潔歌劇ー感謝祭』の、のちに大変行き届いているとわかる3本セットだった。
そんなこんなで『TRUMP』を観たのだけど、『LILIUM』を手に取るまで大分時間が空いてしまった。
いざ観ようと決めて、Twitterで呟きながら物語を追っていった。ここ数年じわじわ観劇する機会が増えていく都度に思うことだけれど、舞台の上から届けられるというのは、どこか鋭い祈りにも似たところがある。『LILIUM』は歌劇ということもあって、歌声や台詞を紡ぐ声は、ときどき薄く引き延ばされて鋭利な氷のようであったり、飴細工のような甘さを併せ持っていたりした。
観はじめたときから分かっていたのは、私は和田彩花さん演じるスノウがとてもすきだということだった。
あの、真実を望むリリーのまっすぐな視線からそっと目を逸らすかのように片頬を隠して垂れる髪型が、スノウという少女をあまりにもうつくしく表していて、何度も見とれた。ファルスとのダンスシーンは観ていてとても幸せだった。無理やりダンスを踊らされていたスノウがファルスから静かに逃れるの、すごくこう、なんていうかこれが性癖というものなのね……と震えてしまった。流した前髪の先で片目が隠れたスノウの顔が、とてもうつくしくて。
「いつもひとりぼっち」でいるスノウは孤高の存在として登場するのだけど、物語が進むにつれて、彼女が自分の信じたいもの・守りたいもののために「選択」していたことが明かされていく。揺れ動き惑いながらも、リリーへの《恐れを知らず無垢なままでいて》*1という自分の願いのためにそうしたのだ、というスノウの選択を思うと、胸が痛かった。
相手を変えることは望まないけれど、自分を抑えて選んだ願いの果てに、ああいう未来がくるかもしれないことはきっとどこかでわかっていて。それでいてリリーに「恐れを知らず無垢なまま」でいて欲しいと託すのは、いつか自分の選択を断罪してほしいような気持ちがあったのかもしれないと思った。そしてだからこそ、自分ではない誰かに「無垢でいて」と願うのは、純粋な祈りからの望みであっても、たぶん呪いなのだ。
『TRUMP』もそうだけど、このシリーズにとって「ともだち」ということばはひどく残酷に作用する。ヴァンプという存在にさらに輪をかけて繭期という不安定さを重ねているからこそ、余計に。ちなみに、『TRUMP』ではウルが好きです。そういう星の下に生まれている。
『TRUMP』のソフィも『LILIUM』リリーも純で無垢で、無垢ゆえにきっと「傲慢」で、だからこそ囚われてしまったんじゃないかと思う。
はじめ、リリーとファルスとの問答には、『TRUMP』を観ている身には、リリーが知らないゆえの傲慢さを持っているのでは……と思ってしまったけど、その後で彼女が迎えた未来がなんとも皮肉だし、何より運命的だった。ああいう運命を、観ている私はとても喜んでしまうのだった。
そして、『LILIUM』と『LILIUM ーリリウム 少女純潔歌劇ー感謝祭』を通して観ると、かつて純で無垢であったソフィが、過ごした時間の果てにかつての自分と鏡合わせのようになった存在に相対する……という構図が、なんともいえず業で、そしてこれからも続いていくだろう時間の先を思うと眩暈がしそうだった。たまんない。
ヴァンパイアものにどうしようもなくついてまわるテーマとして、永遠のいのちと人間の生との相克がある。このシリーズでも、ヴァンパイアは純血主義だし人間との混血であるダンピールは蔑まれている。
私も好きでいろいろと読んできたけれど、このシリーズは劇なので、小説を読むようにはいかない。この演劇だけを見ると、あくまで「そういうもの」として設定されていて、どうしてそうなのか明確に明かされない(もしくは決められてはいないのかもしれない)という点はけっこうある。その隠されていたりはっきりとは見えない部分が、この先のシリーズを見ていくとほんのり透けて見えることがあるんだろうな、と気になっている。このシリーズでヴァンパイアたちがどのように永遠のいのちと不老について捉えているのか、もうすこし詳細に知りたいなと思っている。
観てから一週間ほどは、作中の歌を聞きながら、ずっとあのサナトリウムの少女たちについて考えていた。この記事の下書きもその頃に書いたものだったのだけど、なかなか飲み下せないような気がして、きちんとことばにするのにかなり時間がかかってしまった。
あれから、配信で『SPECTER』を観た。ソフィに与えられた運命を思うと胸が痛くてしようがない……けれど、その先を観ているひとたちの反応から伺うに、もっといろいろが詰まった物語が待っているんだろうなあと思う。
ようやく自分の中での一区切りがついたので、まずは『LILIUM』のDVDを買うことにします。そのうち、できたら、舞台に追いつきたい。
手帳と私についてのささやかな記録
ずっと、「手帳」という存在にときめいてきた。
まず、本と似ているところがいい。物としてかたちが整っていて眺めているだけで素敵に思えた。そして何より、使ううちに「私だけのもの」へと変化していくのが好きだった。
手帳のことはずっと好きだったし、それなりに使ってきてはいた。でも、一年間まるっと通して「日常的に」使えたことは、たぶんない。
だけど、今年はゆるやかに手帳が続けられている。手帳を生活の中に取り入れることは、2019年の目標のひとつだということもあり、とても嬉しい。
手帳という存在が今までよりずっと近しく馴染んでくると、体感だけではなく、紙の上にも「私の過ごした時間」がゆるやかに流れていることに気づいた。それは私にとって、とても革命的な出来事だった。
ときどき何も書かない日だってあるけれど、手帳があることで、時間はただただ過ぎゆくばかりのものではなくなった。こんなふうに、記録を重ねていくことを楽しいと思うようになったんだなあ……と感慨深く思いもした。
手帳、楽しい。手帳が楽しいって、すごく新鮮で嬉しい!
そう思うようになって、だいたい二ヶ月が経つ。
今年の手帳 - MATOKA(SAGE)
本当は、手帳道具のケースとして、リバティのピーコック柄が可愛いちいさいひきだしポーチのことが、ずーっと気になっている。あまりにも可愛い。タッセルもずるい。でも、手帳はあんまし持ち歩かないしなあ、と悩んで悩んで、悩んでいる。ぜんぜん買えるのだけど、ふんぎりがつかない。でも、ちいさいひきだしポーチなら、マスキングテープだって余裕で入るよね……*2という問答が、頭の中でえんえんと繰り広げられている。まだ、在庫ある。
www.1101.com
書き換えることが多いマンスリー部分は、FRIXION BALL slim(ブラウン・ネイビー / 0.38mm)を使い分けて書いている。
ウィークリーで主に使っているのは、HI-TEC-C maica(ブラウン / 0.3mm)。使い切りタイプのハイテックで、色と書き味が気に入っている。軸がほんの少し太めなのもいい。*3
黒字で書きたい気分のときは、ちょっとレトロな雰囲気のエナージェル クレナ(0.3mm)。
ほんとうは万年筆を使いたいところだけど、小さい手帳を選んだので、EFのペン先じゃないとちょっとくるしい。とはいえ、ときどきKawecoのマキアートで書いていたりもする。
使い始めはマンスリー部分もハイテックをつかっていたのだけど、思いの外予定が変更になることが多かった。困って、久しぶりに修正テープを買ってみた。ミドリの小さくてシンプルなシリーズのもの。何にでもすぐシールやマスキングテープを貼ってしまう女なので、キャップ部分にマスキングテープを巻いて、なんとなく手帳と色をリンクさせている。
◎手帳には、ぴったりかつお気に入りのものが必要
いざ手帳生活が楽しくなってみると、“手帳にぴったり合うもの”がなかなかみつからないことに気づいた。
SAGEは「新書サイズ」と書いてあるけれどやや変型で、字の小さい私にはぴったりだけど、手帳用として売られているグッズは少し大ぶりだった。そして、私は(可愛い!)と思っても、自分にちょうどよくなければ、あんまり欲しくならない。
つまりは、たいへんわがままなのだ。
東急ハンズやLOFTをうろうろするたびに、いったいどんなものが欲しいのかがはっきり見えてくる。中でも一番は何だろうと考えたときに残ったのが、(やっぱり、いまの手帳にぴったりサイズのスタンプがどうしても欲しい)という気持ちだったので、ぱっと作ってしまうことにした。
……欲しいものは、作ってでもほしい。無いものは、だいたい作れる。
そう決めて、作ったのがこちら。
中でも、マンスリーの横に捺す、映画や美術館に行ったことを記録するスペースの見出しとして作ったはんこがお気に入り。切手部分には、毎月違うマスキングテープを貼る決まりにしている。この下に日付と何を観たのかを簡単にメモして、一覧化できるようにしている。1月はたくさん映画を観たので、いっぱい記録が並んでいて嬉しかった。 手帳と同じく、出来るだけ映画を観ることも今年の目標の一つです。
2018年はいろいろつらいことがあり、素直に「褒めてほしい!」と主張してみることの大切さや(自分で自分を褒めるのは誰にも迷惑をかけないし、ハッピーだな……)と気づいた年だった。……という学びを活かして、2019年は積極的に自分を褒めるべく、えらいスタンプを作ったのでした。
ゴミ出してえらいね、とか、納品してえらいね、とか。筋トレしたときはハイパーえらいね、とか。「私、なんだかとってもえらいかも!」というときにこのはんこをぽすんと捺すと、何だかちょっとばかし報われたような気持ちがする。特別しんどくて、でもなんとか乗り切った一日はこのはんこのみで記録が終わっていたりするし、「私えらすぎて大変! すごい!!」といっぱい捺すこともある。いったい何をしているんだろう、と思わないでもないけれど。
こういうささやかなオーダーメイドは、当然のことながら、愛はあれどもコスト的には圧倒的に赤だ。でも、ただただ「好き」と私だけのためだけの「ぴったり」を用意する心地よさって、最高に素敵で気持ちがいい。ふつうに買った方がもちろんお財布には優しいし、ちょっと「ぴったり」でないだけで、素敵なものはたくさんある。だけど、一度知ってしまった心地よさの味は、ついつい近寄ってしまうくらいに甘いのだった。あと単純に、何かを作るのが好きなんだろう。
手帳用のはんこは、以前作ったものと一緒に、銀座の古道具屋さんで買った印箱におさめている。
日常を記録するという、ささやかな楽しみ
SAGEには、ウィークリーページにちょっとしたことを書きつけるスペースがある。真ん中で分かれているので、左半分はやることリスト、右半分を日記めいたことを書くスペースにあてて、いわゆるバレッドジャーナル方式(のゆるふわver)で記録をつけている。
その左半分には、ぴったりサイズに作ったチェックボックスはんこ*4を、週末にまとめて捺すことにしている。インクパッドの色は、毎週替えたり、替えなかったり。とくに素敵な予定がある日には、きらきらしたほうを捺すことにしている。ここぞとばかりに、メタルインクを使って。
チェックボックスを捺さない右半分には、その日あった出来事や読んだ本の感想を、寝る前にちょっとばかし書くスペースにしている。頑張れば140字くらい書けそう、というこのくらいの紙幅が気楽でよかったのかもしれない。
手帳に書いてある私の字は、ときどき、めちゃくちゃよれよれしている。つまりは、きたない。もともと、字はあんまりきれいなほうではない。でも、それが案外よかったりもする。そのよれよれの線に、その日の私が滲んでいるから。
たいしたことは書いてないものの、読み返してみると、日常の記録はなんだかじわっと面白い。ふふっとする程度の面白さなのだけど、何しろ自分がしたことなので、自分にだけはコンテクストがあるのだ。ときどき読み返して(それはなんだかいいかもね)と、過去の自分に対して相槌を打ったりしている。
たとえば、こんなの。
これからの手帳と私
ぽっかり一週間も空いたりせずに記録が続くのははじめてのことで、つい何度も書いてしまうくらい、まだまだびっくりしている。たぶん、バレッドジャーナルが合っていたんだろうなあ。半年くらい続いたら、もっと手帳周りも手帳に書きつけた記録も、変化しているんだろうな。と、考えてみたりしている。
手帳が生活に馴染んできていることで、毎日がゆるやかに楽しくなったのは、とても大きな発見だった。ただ時間が過ぎていくばかりだと、さみしく思うことも減った。手帳を書くことで、日々を重ねていく時間や自分の内側がやんわりと可視化されていくにつれ、日常に行間のようなものが出来ていくような感じがして、それがいまはとても新鮮で、心地がいい。
一年経ったら、もう少し手帳はくたっとしてるかな。紙はよれてるかな。字は上達しないだろうけど、愛着は増えていく気がしている。
毎日後ろに流れていく過去の私が、手帳を開くと、ごく短い文の上にほのかに滲んで現れる。何でもないだろう、私だけしか見ていない景色。そうしたささやかさを、私なりに重ねていけたらいいなと願いながら、今日も手帳に向かっている。
今から(再び)読むコバルト文庫おすすめ5作
先日コバルト文庫についての記事が回ってきて、けっこう話題になっていた。
色々思うところがあったりしたので、「今からコバルト文庫を(再び)読んでみたいかも……」という人におすすめしたい作品を選んでみました。
・比較的紙で手に入りやすいような気がする本*1
・手に取りやすい1冊完結~数冊完結もの
・コバルト読者だった方~初めての方によさそうなもの
……という基準で選んでいます! あとは趣味です。
そして、次に読んだらいいかも? なおすすめがついています。
- コバルト文庫はじめにおすすめの鉄板小説集 - 氷室冴子『月の輝く夜に/ざ・ちぇんじ!』
- 偽装結婚相手は自分のファンだった! - 仲村つばき『ひみつの小説家の偽装結婚』
- ひそやかな両片想いと宮廷陰謀劇 - 久賀理世『招かれざる小夜啼鳥は死を呼ぶ花嫁』
- 恋をしたならカーニバル! - 野梨原花南『還るマルドールの月』
- シンデレラの娘、絶賛放蕩生活満喫中! - せひらあやみ『ガラスの靴はいりません!』
- そのほかについてざっくり
コバルト文庫はじめにおすすめの鉄板小説集 - 氷室冴子『月の輝く夜に/ざ・ちぇんじ!』
「ぼんやりしている」貴志子には、親子ほどに年の違う恋人・有実がいる。有実から娘を預かってほしいと頼まれた貴志子は、初めて会った自分と然程年の違わない美しい少女・晃子に会い、その頬に瘡蓋の痕が残っていることを知る。(月の輝く夜に)
権大納言家に生まれた、まるで双子のようにそっくりな異母兄弟・綺羅君と綺羅姫。文武に秀でた綺羅君は、実は男の子のように活発な姫君で、病弱で大人しい綺羅姫はその弟君だった。成人の儀で本来の性別に戻るはずが、姫は綺羅君として元服・出仕をしてしまい……。(ざ・ちぇんじ!)
恋することの業や生きることへの苦しみが、月の光で照らされるように静かにまなざされる『月の輝く夜に』*2と、『とりかへばや物語』を下敷きに軽快な氷室冴子節を楽しく効かせた男女入れ替わりもの『ざ・ちぇんじ!』。同じ平安ものでも大分テンションに差がありますが、それぞれが持つ魅力に引きこまれて、どんどん先へと読み進めてしまうはず。
みんな知ってるだろう名作『なんて素敵にジャパネスク!』と、その著者である氷室冴子の名は、コバルト文庫と聞いたら必ずでてくるもの。この本は未収録短編もぎゅっと収録したファンアイテム的(かつ分厚い)一冊なので*3、いきなりこれだと「読んでない本の番外編が入ってる」状態です。そのため、初めてのコバルト文庫にはどうかなとも思うのですが、それ以上に、ジャパネスクと同じく平安ものの表題作2つがほんとうに面白いので推したい。
そして個人的な思い出ですが、私が高校生の頃にはすでに、古典の先生としか氷室作品の話で盛り上がれなかったので*4、氷室作品を通っていない世代って、氷室冴子を読んできたコバルト読者が思っている以上に多いんじゃないかと感じていて、やっぱり入り口として挙げておきたいなと思ったのでした。
>>>次に読みたい本
・氷室冴子の平安ものをもっと読みたい!→『なんて素敵にジャパネスク!』
なんて素敵にジャパネスク ―新装版― なんて素敵にジャパネスク シリーズ(1) (なんて素敵にジャパネスク シリーズ) (コバルト文庫)
- 作者: 氷室冴子,後藤星
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- 発売日: 1999/04/01
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『ざ・ちぇんじ!』最高に面白かったな~! と思ったら、安心してジャパネスクにGoしてください。復刻版は2巻まででストップしているので、電子書籍でどうぞ。
・氷室冴子を久しぶりに読んだ。やっぱり好き……→『文藝別冊 氷室冴子』
2018年に、河出書房から氷室冴子本が出ました。1992年のインタビューや対談・イラストレーターの方の寄稿・作家のエッセイなどが収録されています。氷室冴子という作家の輪郭と軌跡をたどるのに、おすすめの一冊です。
偽装結婚相手は自分のファンだった! - 仲村つばき『ひみつの小説家の偽装結婚』
ひみつの小説家の偽装結婚 恋の始まりは遺言状!? (コバルト文庫)
- 作者: 仲村つばき
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名目上の結婚をしていた覆面小説家のセシリアは、夫である騎士のヒースを亡くし、遺言によってヒースの部下・クラウスと再婚することに。作家生命の危機を脱するため、小説大賞を目指す中、セシリアはクラウスが自分の小説のファンだと知る。
主人公が小説家……という作品の中でも、セシリアの作風がロマンスや少女小説ではなく、硬派で地味めな感じ(ただし根強いファンはいる)というのがちょっと新鮮。小説家仲間のフレデリカの作風を見て悩んだりあがいたりしながら自分の作品と向き合い、偽装結婚相手であるクラウスともぎこちなく距離を縮めていくお話。
セシリアが自分のファンであるクラウスから、正体は隠したまま自作への感想を聞かされるたびに、「尊い」と言われたり涙がにじむくらい嬉しさを感じたりする場面がとてもいい。あと、「女性が本を出すには性別を偽り覆面作家にならないといけない」この世界において、セシリアとフレデリカは自分の足でしっかり立とうとしている様子が魅力的ですきです。
>>>次に読みたい本:スピンオフ『ひみつの小説家と葡萄酒の貴公子』
【電子オリジナル】ひみつの小説家と葡萄酒の貴公子 (集英社コバルト文庫)
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- メディア: Kindle版
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電子オリジナルで、セシリアの覆面小説家仲間&親友のフレデリカが主人公のスピンオフが出ています*5。有名なお菓子会社の令嬢でもあるフレデリカ(作風はキャラクターの立ったエンタメ系)と、彼女が以前登場人物のモデルに(勝手に)しちゃったワイン商の令息・アルテのお話。後日談も2編収録されてる嬉しい一冊。
ひそやかな両片想いと宮廷陰謀劇 - 久賀理世『招かれざる小夜啼鳥は死を呼ぶ花嫁』
招かれざる小夜啼鳥は死を呼ぶ花嫁 ガーランド王国秘話 (コバルト文庫)
- 作者: 久賀理世
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2018/08/01
- メディア: 文庫
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穏やかな幽閉生活を送っていた先王の遺児・エレアノールは、第二王子の妃候補として、急遽王宮に呼び寄せられることに。監査役として訪れる第二王子ダリウスに淡い想いを抱いていたエレアノールだが、十年ぶりに帰還した宮廷で事件が起こる。
望まれない王女と望まぬまま王子になったふたりの交感が、静かに描かれています。じれじれ……とまではいかないものの、周りにはばればれな淡い「両片想い」と宮廷で起こる事件との両方が楽しめます。物語が進むにつれて、諦めることになれていたエレアノールにしなやかな強さがあることが浮かび上がってくるのがとてもすき。「昔のコバルト文庫が好きだった」という方にも、「あんまりラブばっかりだと手に取りにくい」という方にもおすすめしたい、今のコバルト文庫です。
>>>次に読みたい本:白川紺子『後宮の烏』(オレンジ文庫)
細かなディテールと物語の中の歴史がていねいに描かれている中華ファンタジー。はじめはほんのりとぼかされている「世界のしくみ」が物語において影のように濃くなったり淡くなったりしながら繙かれていくので、ファンタジー好きはぜひ。古き良き少女小説の系譜に連なる、誠実な物語だと思います。2019年2月現在、2巻まで発売中。
恋をしたならカーニバル! - 野梨原花南『還るマルドールの月』
還るマルドールの月 The Return of the Mardore Moon (集英社コバルト文庫)
- 作者: 野梨原花南
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2016/04/15
- メディア: Kindle版
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爵位と引き替えに元敵国の大富豪と結婚することになった没落貴族の娘・ダリアード。向かった先で待っていたのは、眼光鋭い警部だった。堅物な彼に激しく「運命」を感じてしまったダリアードの人生は一転、カーニバルみたいに色づきはじめて……。
代表作・ちょーシーズ*6で知られる著者による1冊完結のキュートなラブコメ。軽やかで楽しい、ハッピーな話が読みたいならこれ。恋なんて「すすけたガラスの向こうに三日月が見える」程度のものだと思っていたダリアードが恋に落ち、国宝の宝石をねらう怪盗とたくらみを追う物語。ぜひ読んで、野梨原作品の魔法にかかってほしい。人生は楽しくて恋は素敵で、いつだってカーニバルなんだ! と元気になるはず。
>>>次に読みたい本:マルスシティシリーズ
アメリカ禁酒法時代を思わせる設定の、火星にあるマルスシティ。そこで個性豊かなキャラクターたちが軽快に、時にどたばた駆け廻るお話。全2巻なので読みやすいし、さやかもチュチェもイリヤも最高に生き生きしてて格好よくて人間くさくて痛快で、とっても面白いです。憂鬱な夜に読むとちょっと気持ちが楽になるし、世界がきらきらして見える。電子で買えます。
シンデレラの娘、絶賛放蕩生活満喫中! - せひらあやみ『ガラスの靴はいりません!』
ガラスの靴はいりません!: シンデレラの娘と白・黒王子 (コバルト文庫)
- 作者: せひらあやみ,加々見絵里
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2018/12/27
- メディア: 文庫
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千年王国では、二十歳を過ぎれば嫁き遅れといわれる中、かつては美しい少女だったシンデレラの娘・クリスティアナは今やぽっちゃりとした三十路となり、酒・肉・ギャンブルの放蕩生活を謳歌していた。ところがある日、美しき双子の王子から求婚されてしまい……全力でお断り&逃亡することに。
冒頭数ページの掴みが強烈すぎるラブコメ(試し読みはこちら)。いままで挙げた作品の中では、わりとあらあらな場面があるほうだけど、からっとすぱっと勢いのよすぎる語りと双子の王子を交互に見せる構成のおかげで、どきどきしつつさらっと読めるかなと思います。一見とっても規格外だけど、「私をみてほしい」という普遍的な恋の願いはとても少女小説的だし、そこまでやっちゃう? という勢いのよさはありつつ、双子の王子による求婚のねらいやクリスティアナの使命がコメディにほどよいスパイスを加えていて、こういう少女小説もいいなと思った一冊です。
ネット(主にTwitter)と相性が良さそうだし、話題になって「SNSで話題」の文字が躍る帯がついているのが見える気がするのにまだなってない……?? ちょうど、クリスティアナとクセのある侍女ステファニーちゃん *7による連作短編が電子オリジナルで出るので(2019年2月22日発売)、この機会にどうぞ。
>>>次に読みたい本:松田志乃ぶ『わたしの嫌いなお兄様』
おてんば女学生の有栖とその従兄にして「素人探偵気取り」の要が消えた花嫁人形の謎、人気乙女小説家の謎、誘拐事件の謎を解く大正浪漫ミステリー。テンポよく進む連作短編です。大正らしいモチーフが散りばめられたときめく描写とついにやにやしちゃう恋模様とで、たいへんキュートでキャッチーな一冊。
そのほかについてざっくり
・読みたいけど近くの書店になかった!
紙の本がいいなら、honto(丸善・ジュンク堂)・紀伊國屋書店などで検索すると、全国にある店舗の在庫を調べて、お取り寄せできたりします。
※詳細は各サイトでご確認ください。
私がよく利用するのはhontoで、取り寄せてもらったり、「どうしても今日これを買わないとかなしい! 調べたら在庫△! 私が行くまでに誰かに奪われないか心配!」*8というときに取り置きサービスを利用しています。べんり。
・電子書籍ってハードル高い?
紙の本もだいすきだし電子書籍もときどき買っていると言うと、周囲に本読みが少ないので、結構いまだにびっくりされる。そういうときに、やっぱりまだ電子書籍は馴染みがないんだなと感じるのですが、アプリをダウンロードすれば勿論スマホで読めるし、PCでも読めるしアプリとデータ同期されていたりする(例:PCで途中まで読んだページからアプリで読める)し、専用リーダーがなくても読めます。
あんまり知られていないのかもしれないけれど、以前よりずっと、電子書籍は気軽に始められるものになっています。そして、紙の本の在庫がなくても著者の方に利益が発生するのでハッピーです。
コバルト読んでたな~とか、実家にある……とか、久々に読み返したいなとか。そういう思い出の作品は、けっこう電子化していたりします。電子書籍は続きが気になって書店が開くまで眠れないよ~!(じたばた)とベッドの上を転がらなくても、ぽちっと買えるところが何より素敵。
・あの本が入ってないぞ!! という方へ
お気持ち、よくわかります。これを書いている間に出来ていたこちら↓がおすすめです。
*1:※2019.2現在、書店によっては在庫があるかもしれない? というものを含む。中にはちょっと厳しいかもしれないというものもあります……。
*3:2019.2現在、電子化されていない『少女小説家は死なない!』の番外編も入っている
*4:「みんな知らないかな~ジャパネスク!」「だいすきです!」「行き触れだ~!」「ぶっちぎりの仲よ!」という会話を授業中に繰り広げ、クラスメイトをおいてきぼりにした。後で「先生と盛り上がってた本、図書室にある?」と聞かれたのでおすすめしておいた。
*5:少女小説は結構「主人公たちの周りの人々についてもっと読みたいよ~という欲求に応えてくれるので、番外編とかスピンオフがあったりする
*6:電子書籍にあるから今から読める&電子オリジナルで新作も出てます
*7:この二人の関係性がいい
*8:だいたい杞憂に終わるのだけども、ときどき奪われている。
2019年にやりたいこと
実はいままでの人生において、あんまり抱負や目標を立てて生きてこなかった(立てても忘れていたという気がする)。我ながらびっくりなぼんやりさを軌道修正したくもあり、2019年はもう少しきちんと立ててみようかな、と思ったのだった。あと、目標を立てている人が年末に振り返っているのを見ていると楽しそうだな、と感じたのも大きい。
2018年は、毎月一本映画を観ることをふわっと目標にしていました。
nanakikae.hatenadiary.jp結果は、5本/12ヶ月。ほかに、舞台2作(DVD・観劇)、ミュージカル2作(観劇)とAmazon primeでアニメ数本は観たんだけど、達成がかなり難しかった。でも以前に比べたらずっと、ほんとうに随分と「いつかに見逃したもの」を観られるようになったなあと感じた一年でもあった。少女革命ウテナも、行動範囲内にレンタルしにいくお店があまりない私のようなタイプ*1には、primeがなければもっとずっと観るのが遅くなったんだろうなという気がする。
2019年にやりたいことは、ひとまず多めに立ててみることにした。
・読書記録をつける
年末からお試しでやっている読書メーターがわりと続けられそうなので、このまま継続できたらいいな~と思って。
・映画を月に1本観る
いま観たい気持ちが決まっているのは『女王陛下のお気に入り』と『ユーリ!!! on ICE 劇場版』です。
・手帳を生活に加えてみる
いままで、手帳は大好きだけど、つい頭の中で予定を管理しがちだった。あまりにめまぐるしかったために2018年後半は手帳がないとつらかったので、2019年はもう少し身近なものにできるのではという気がしている。
item.rakuten.co.jpいろいろ見て、いいなと思ったこちらを買った。ちらほらみかけるバレッド・ジャーナル式の中面で、デザインのシンプル加減がちょうどよかったので決めた。このメーカー(旧:ORANGE AIRLINES、現:MATOKA)の手帳はずっと好き。表紙は少し加工しようかなあ。
二週間ほど自分だけのテーマを決めて過ごしてみたら、その不思議な心地が面白かったので、手帳と併せてやってもいいのかなという気がしている。
今週のテーマが「わたしの悲しみはあなたの鑑賞物ではない」だったのだけど、私にしてはちょっと苛烈なので(まあだいたい苛烈に生きたいとは思いつつ)、明日からはもうすこし平らかに生きたい。
— 七木香枝 (@nanakikae) 2018年11月11日
・部屋を育てる
よく冷やしておいた、気軽にすいっと飲める甘い白が今夜の読書の友。まるき葡萄酒「デラウェアにごり」は気さくな可愛い甘さですき。黒猫シリーズにはほろ酔いがお似合いだと思うのだけど、新刊はどうだろう。 #本と晩酌 pic.twitter.com/NSuvwP5164
— 七木香枝 (@nanakikae) 2018年12月30日
右の写真のように、今日のお酒の撮影場所としてはよいのだけど、引っ越してから壁に何にも貼らない/つけないまま年を越してしまったので、もっと壁面に何かを足すのと全体的な居心地の良さを上げたい。
https://twitter.com/nanakikae/status/1061611413326589952https://twitter.com/nanakikae/status/1061611413326589952
https://twitter.com/nanakikae/status/1061611413326589952
https://twitter.com/nanakikae/status/1061611413326589952・とにかく文章を書く
書きます。小説も書きたい。
・環境を変える
これはほんとうに、ちゃんと取り組まねばならないなと思っている。
……とはいえ、ゆるっとふわっとやりたいな~と楽しむことにします!
あとは本をたくさん読むぞ!
*1:ポストインする便利なやつがあるのは知っています