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今から(再び)読むコバルト文庫おすすめ5作

先日コバルト文庫についての記事が回ってきて、けっこう話題になっていた。
色々思うところがあったりしたので、「今からコバルト文庫を(再び)読んでみたいかも……」という人におすすめしたい作品を選んでみました。

anond.hatelabo.jp

 

◎今から(再び)読むコバルト文庫おすすめ5作

・比較的紙で手に入りやすいような気がする本*1
・手に取りやすい1冊完結~数冊完結もの
・コバルト読者だった方~初めての方によさそうなもの

……という基準で選んでいます! あとは趣味です。
そして、次に読んだらいいかも? なおすすめがついています。

 

1.コバルト文庫はじめにおすすめの鉄板小説集 - 氷室冴子月の輝く夜に/ざ・ちぇんじ!』

月の輝く夜に/ざ・ちぇんじ! (コバルト文庫)

月の輝く夜に/ざ・ちぇんじ! (コバルト文庫)

 

「ぼんやりしている」貴志子には、親子ほどに年の違う恋人・有実がいる。有実から娘を預かってほしいと頼まれた貴志子は、初めて会った自分と然程年の違わない美しい少女・晃子に会い、その頬に瘡蓋の痕が残っていることを知る。(月の輝く夜に

権大納言家に生まれた、まるで双子のようにそっくりな異母兄弟・綺羅君と綺羅姫。文武に秀でた綺羅君は、実は男の子のように活発な姫君で、病弱で大人しい綺羅姫はその弟君だった。成人の儀で本来の性別に戻るはずが、姫は綺羅君として元服・出仕をしてしまい……。(ざ・ちぇんじ!)

恋することの業や生きることへの苦しみが、月の光で照らされるように静かにまなざされる『月の輝く夜に*2と、『とりかへばや物語』を下敷きに軽快な氷室冴子節を楽しく効かせた男女入れ替わりもの『ざ・ちぇんじ!』。同じ平安ものでも大分テンションに差がありますが、それぞれが持つ魅力に引きこまれて、どんどん先へと読み進めてしまうはず。

みんな知ってるだろう名作『なんて素敵にジャパネスク!』と、その著者である氷室冴子の名は、コバルト文庫と聞いたら必ずでてくるもの。この本は未収録短編もぎゅっと収録したファンアイテム的(かつ分厚い)一冊なので*3、いきなりこれだと「読んでない本の番外編が入ってる」状態です。そのため、初めてのコバルト文庫にはどうかなとも思うのですが、それ以上に、ジャパネスクと同じく平安ものの表題作2つがほんとうに面白いので推したい。
そして個人的な思い出ですが、私が高校生の頃にはすでに、古典の先生としか氷室作品の話で盛り上がれなかったので*4、氷室作品を通っていない世代って、氷室冴子を読んできたコバルト読者が思っている以上に多いんじゃないかと感じていて、やっぱり入り口として挙げておきたいなと思ったのでした。

>>>次に読みたい本

氷室冴子の平安ものをもっと読みたい!→『なんて素敵にジャパネスク!』

『ざ・ちぇんじ!』最高に面白かったな~! と思ったら、安心してジャパネスクにGoしてください。復刻版は2巻まででストップしているので、電子書籍でどうぞ。

氷室冴子を久しぶりに読んだ。やっぱり好き……→『文藝別冊 氷室冴子

2018年に、河出書房から氷室冴子本が出ました。1992年のインタビューや対談・イラストレーターの方の寄稿・作家のエッセイなどが収録されています。氷室冴子という作家の輪郭と軌跡をたどるのに、おすすめの一冊です。

 

2.偽装結婚相手は自分のファンだった! - 仲村つばき『ひみつの小説家の偽装結婚

ひみつの小説家の偽装結婚 恋の始まりは遺言状!? (コバルト文庫)
 

名目上の結婚をしていた覆面小説家のセシリアは、夫である騎士のヒースを亡くし、遺言によってヒースの部下・クラウスと再婚することに。作家生命の危機を脱するため、小説大賞を目指す中、セシリアはクラウスが自分の小説のファンだと知る。

主人公が小説家……という作品の中でも、セシリアの作風がロマンスや少女小説ではなく、硬派で地味めな感じ(ただし根強いファンはいる)というのがちょっと新鮮。小説家仲間のフレデリカの作風を見て悩んだりあがいたりしながら自分の作品と向き合い、偽装結婚相手であるクラウスともぎこちなく距離を縮めていくお話。

セシリアが自分のファンであるクラウスから、正体は隠したまま自作への感想を聞かされるたびに、「尊い」と言われたり涙がにじむくらい嬉しさを感じたりする場面がとてもいい。あと、「女性が本を出すには性別を偽り覆面作家にならないといけない」この世界において、セシリアとフレデリカは自分の足でしっかり立とうとしている様子が魅力的ですきです。

>>>次に読みたい本:スピンオフ『ひみつの小説家と葡萄酒の貴公子』

 電子オリジナルで、セシリアの覆面小説家仲間&親友のフレデリカが主人公のスピンオフが出ています*5。有名なお菓子会社の令嬢でもあるフレデリカ(作風はキャラクターの立ったエンタメ系)と、彼女が以前登場人物のモデルに(勝手に)しちゃったワイン商の令息・アルテのお話。後日談も2編収録されてる嬉しい一冊。

 

3.ひそやかな両片想い×宮廷陰謀劇 - 久賀理世『招かれざる小夜啼鳥は死を呼ぶ花嫁』

穏やかな幽閉生活を送っていた先王の遺児・エレアノールは、第二王子の妃候補として、急遽王宮に呼び寄せられることに。監査役として訪れる第二王子ダリウスに淡い想いを抱いていたエレアノールだが、十年ぶりに帰還した宮廷で事件が起こる。

望まれない王女と望まぬまま王子になったふたりの交感が、静かに描かれています。じれじれ……とまではいかないものの、周りにはばればれな淡い「両片想い」と宮廷で起こる事件との両方が楽しめます。物語が進むにつれて、諦めることになれていたエレアノールにしなやかな強さがあることが浮かび上がってくるのがとてもすき。「昔のコバルト文庫が好きだった」という方にも、「あんまりラブばっかりだと手に取りにくい」という方にもおすすめしたい、今のコバルト文庫です。

>>>次に読みたい本:白川紺子『後宮の烏』(オレンジ文庫

後宮の烏 (集英社オレンジ文庫)

後宮の烏 (集英社オレンジ文庫)

 

細かなディテールと物語の中の歴史がていねいに描かれている中華ファンタジー。はじめはほんのりとぼかされている「世界のしくみ」が物語において影のように濃くなったり淡くなったりしながら繙かれていくので、ファンタジー好きはぜひ。古き良き少女小説の系譜に連なる、誠実な物語だと思います。2019年2月現在、2巻まで発売中。

 

4.恋をしたならカーニバル! - 野梨原花南『還るマルドールの月』

爵位と引き替えに元敵国の大富豪と結婚することになった没落貴族の娘・ダリアード。向かった先で待っていたのは、眼光鋭い警部だった。堅物な彼に激しく「運命」を感じてしまったダリアードの人生は一転、カーニバルみたいに色づきはじめて……。

代表作・ちょーシーズ*6で知られる著者による1冊完結のキュートなラブコメ。軽やかで楽しい、ハッピーな話が読みたいならこれ。恋なんて「すすけたガラスの向こうに三日月が見える」程度のものだと思っていたダリアードが恋に落ち、国宝の宝石をねらう怪盗とたくらみを追う物語。ぜひ読んで、野梨原作品の魔法にかかってほしい。人生は楽しくて恋は素敵で、いつだってカーニバルなんだ! と元気になるはず。

>>>次に読みたい本:マルスシティシリーズ

アメリ禁酒法時代を思わせる設定の、火星にあるマルスシティ。そこで個性豊かなキャラクターたちが軽快に、時にどたばた駆け廻るお話。全2巻なので読みやすいし、さやかもチュチェもイリヤも最高に生き生きしてて格好よくて人間くさくて痛快で、とっても面白いです。憂鬱な夜に読むとちょっと気持ちが楽になるし、世界がきらきらして見える。電子で買えます。

 

5.シンデレラの娘、絶賛放蕩生活満喫中♡ - せひらあやみ『ガラスの靴はいりません!』

ガラスの靴はいりません!: シンデレラの娘と白・黒王子 (コバルト文庫)

ガラスの靴はいりません!: シンデレラの娘と白・黒王子 (コバルト文庫)

 

千年王国では、二十歳を過ぎれば嫁き遅れといわれる中、かつては美しい少女だったシンデレラの娘・クリスティアナは今やぽっちゃりとした三十路となり、酒・肉・ギャンブルの放蕩生活を謳歌していた。ところがある日、美しき双子の王子から求婚されてしまい……全力でお断り&逃亡することに。

冒頭数ページの掴みが強烈すぎるラブコメ(試し読みはこちら)。いままで挙げた作品の中では、わりとあらあらな場面があるほうだけど、からっとすぱっと勢いのよすぎる語りと双子の王子を交互に見せる構成のおかげで、どきどきしつつさらっと読めるかなと思います。一見とっても規格外だけど、「私をみてほしい」という普遍的な恋の願いはとても少女小説的だし、そこまでやっちゃう? という勢いのよさはありつつ、双子の王子による求婚のねらいやクリスティアナの使命がコメディにほどよいスパイスを加えていて、こういう少女小説もいいなと思った一冊です。

ネット(主にTwitter)と相性が良さそうだし、話題になって「SNSで話題」の文字が躍る帯がついているのが見える気がするのにまだなってない……?? ちょうど、クリスティアナとクセのある侍女ステファニーちゃん *7による連作短編が電子オリジナルで出るので(2019年2月22日発売)、この機会にどうぞ。

>>>次に読みたい本:松田志乃ぶ『わたしの嫌いなお兄様』

わたしの嫌いなお兄様 (コバルト文庫)

わたしの嫌いなお兄様 (コバルト文庫)

 

おてんば女学生の有栖とその従兄にして「素人探偵気取り」の要が消えた花嫁人形の謎、人気乙女小説家の謎、誘拐事件の謎を解く大正浪漫ミステリー。テンポよく進む連作短編です。大正らしいモチーフが散りばめられたときめく描写とついにやにやしちゃう恋模様とで、たいへんキュートでキャッチーな一冊。

 

◎そのほかについてざっくり

・読みたいけど近くの書店になかった! 

がーん! それは悲しい。紙の本がいいなら、honto丸善ジュンク堂)・紀伊國屋書店などで検索すると、全国にある店舗の在庫を調べて、お取り寄せできたりします。※詳細は各サイトでご確認ください。

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これはhontoで還るマルドールの月を調べた画面のキャプチャ。

私がよく利用するのはhontoで、取り寄せてもらったり、「どうしても今日これを買わないとかなしい! 調べたら在庫△! 私が行くまでに誰かに奪われないか心配!」*8というときに取り置きサービスを利用しています。べんり。

 

電子書籍ってハードル高い?

紙の本もだいすきだし電子書籍もときどき買っていると言うと、周囲に本読みが少ないので、結構いまだにびっくりされる。そういうときに、やっぱりまだ電子書籍は馴染みがないんだなと感じるのですが、アプリをダウンロードすれば勿論スマホで読めるし、PCでも読めるしアプリとデータ同期されていたりする(例:PCで途中まで読んだページからアプリで読める)し、専用リーダーがなくても読めます。

あんまり知られていないのかもしれないけれど、以前よりずっと、電子書籍は気軽に始められるものになっています。そして、紙の本の在庫がなくても著者の方に利益が発生するのでハッピーです。

コバルト読んでたな~とか、実家にある……とか、久々に読み返したいなとか。そういう思い出の作品は、けっこう電子化していたりします。電子書籍は続きが気になって書店が開くまで眠れないよ~!(じたばた)とベッドの上を転がらなくても、ぽちっと買えるところが何より素敵。

↓は集英社電子書籍が購入できる電子書店一覧です。

ebooks.shueisha.co.jp

 ・あの本が入ってないぞ!! という方へ

お気持ち、よくわかります。おすすめの本をコメントで書いていただけると、私が読みます。そして、これを書いている間に出来ていたこちら↓がおすすめです。

togetter.com

*1:※2019.2現在、書店によっては在庫があるかもしれない? というものを含む。中にはちょっと厳しいかもしれないというものもあります……。

*2:そしてあの最後が最高にすき。漫画版もとてもおすすめ。

*3:2019.2現在、電子化されていない『少女小説家は死なない!』の番外編も入っている

*4:「みんな知らないかな~ジャパネスク!」「だいすきです!」「行き触れだ~!」「ぶっちぎりの仲よ!」という会話を授業中に繰り広げ、クラスメイトをおいてきぼりにした。後で「先生と盛り上がってた本、図書室にある?」と聞かれたのでおすすめしておいた。

*5:少女小説は結構「主人公たちの周りの人々についてもっと読みたいよ~という欲求に応えてくれるので、番外編とかスピンオフがあったりする

*6:電子書籍にあるから今から読める&電子オリジナルで新作も出てます

*7:この二人の関係性がいい

*8:だいたい杞憂に終わるのだけども、ときどき奪われている。